三都杯決勝大会。
SILEMの浅香友希さんにとって、この大会への挑戦は、技術を競うだけの時間ではなかった。
年上の美容師さんたちに囲まれ、作品と向き合い、モデルさんと向き合い、自分自身と向き合う。
その積み重ねのなかで、浅香さんの美容師としての意識は少しずつ変わっていった。
「自分の中でも、やっぱ成長しないとっていう気持ちがあったんで」
そして、その環境によって、
「強制的に上げてもらえたっていう感じはありますね」と振り返る。
三都杯という舞台に立ったことで見えてきた、自分自身の変化。
その先には、浅香さんがこれから目指していきたい美容師像も少しずつ見え始めていた。
髪と向き合う時間が、自分を変えていった
三都杯を終えて感じた自身の成長について、
「髪の毛に向き合うことが増えたから」と話す。
大会へ向けて作品をつくるためには、普段以上に髪を見て、触れ、考え続けなければならない。
どこを切れば、どう動くのか。
どうすれば、自分が思い描く形になるのか。
ひとつのデザインを完成させるために、何度も試し、考える。
その時間が増えたことで、もっとさまざまな技術を学びたいという気持ちも強くなっていった。

さらに、決勝の舞台に集まるのは、経験を重ねてきた美容師さんたち。
「いろんな人に見られるから」
そして、
「年上の人ばっかりやから」
その環境そのものが、浅香さんに刺激を与えた。
周囲の技術や作品を目の当たりにすることで、自分自身も今のままではいけないと思う。
三都杯という場所が、浅香さんの成長を一段階引き上げてくれた。
「これが可愛い」と思えるところまで
しかし、決勝までの道のりが順調だったわけではない。
浅香さんには、思うように作品をつくれない時間もあった。
モデルさんに対して、「申し訳なかったなっていう気持ち」を抱いたこともあったという。
本番までに、自分自身が心から、
「これが可愛いな」
と思えるものへたどり着きたい。
けれど、なかなかそこまで形にすることができない。
迷いながら、試しながら、何度も作品と向き合った。

それでも決勝のステージでは、
「これがしたい」
「ここが可愛い」
と、自分自身でちゃんと思えるものをつくることができた。
だからこそ、「創れたんで楽しかったです」という言葉が自然に出てくる。
結果だけではない。
自分自身が納得できるものをつくれた。
その経験は、浅香さんにとって大きなものになった。
自分の「好き」を、言葉にする
今回の三都杯では、作品をつくるだけではなく、スピーチを通してデザインについて伝える時間もあった。
そこで浅香さんが向き合うことになったのは、自分が何をつくりたいのかという問いだった。
感覚だけでつくるのではない。
なぜ、このデザインなのか。
どこが好きなのか。
何を見せたいのか。
自分のなかにある感覚を整理し、言葉にする。その答えを見つけるまでには時間がかかった。
そんななか、周囲からかけられた言葉があった。
「好きなことをしたら良いよ」
その言葉によって、浅香さんは改めて自分自身の感覚へ目を向けていく。
誰かに評価されるためだけの作品ではなく、
「自分は、こういうのを作りたいな」
と思えるもの。
三都杯のステージで表現したのは、そんな自分自身の「好き」だった。
苦手だった「切ること」が、楽しいものへ
浅香さんはもともと、カットに対して苦手意識を持っていたという。
「苦手意識が、もともと強くて」
自分が好きだったのは、メイクやヘアセット。髪を切ることよりも、そうした表現に惹かれていた。
けれど三都杯へ向け、何度も髪を切る。切ったことで、この部分が動かしやすくなる。
ここを変えれば、デザインの見え方が変わる。そんな発見を重ねていった。
「三都杯を通して、いっぱいやっていくうちに」
少しずつ、カットそのものの面白さが見えてきた。
そして、
「それは楽しいなって思えたんで」
苦手だったものが、いつしかもっと知りたいものへと変わっていった。
それは、三都杯に挑戦しなければ気づかなかった感覚だったのかもしれない。
もっと、いろんなものを切ってみたい。
カットへの苦手意識が薄れていくにつれて、浅香さんのなかには新しい気持ちも生まれた。
美容師という仕事について、
「深く美容師について考えるというか」
これまでとは違う視点で考えるようになった。
そして、「もっと、いろんなものを切りたい」と思うようになった。
コンテストのためだけに技術を身につけるのではない。
新しい技術を知ることで、自分ができるデザインが増える。
表現できるものが増える。お客様に提案できることも増えていく。
三都杯で髪と向き合った時間は、浅香さん自身が美容師という仕事をもう一度見つめ直す時間にもなっていた。
女性だからこそ、できる提案
浅香さんがこれから目指していきたい美容師像。
そこには、ヘアだけにとどまらない思いがある。
「女性だからこそ、できる提案とかもあったりするんで」
ヘア。
メイク。
ファッション。
そして、その人が過ごす特別な一日。
髪を切るだけではなく、その人自身をトータルで見ながら提案していく。

浅香さんは、
「その人の特別な日とかを」
「プロデュースというか、提案できる」
そんな存在になりたいと考えている。
これまで好きだったメイクやヘアセット。
そして、三都杯を通して新たに面白さを知ったカット。
どちらかひとつではない。
それらすべてを使って、目の前の人に向き合う。
「全部、携われるような人」
それが、浅香さんがこれから歩んでいきたい美容師としての道だ。
「好き」が、新しい可能性を広げていく
三都杯への挑戦によって、浅香さんが得たものはひとつではない。
年上の美容師さんたちと同じ場所に立ったことで生まれた、
「もっと成長したい」という気持ち。
作品づくりに迷いながらも、
「これが可愛い」と思えるものを最後には形にできた経験。
そして、苦手だったカットを、
「楽しい」と思えるようになったこと。
三都杯に挑戦したからこそ、自分の「好き」と「苦手」の両方に向き合うことができた。
そして、そのどちらもが、これからの可能性につながっていく。
「好きなことをしたら良いよ」
その言葉をきっかけに、自分自身が何をつくりたいのかを見つめた浅香友希さん。
ヘアも、メイクも、ファッションも。
ひとつに決める必要はない。
自分が好きだと思えるものを大切にしながら、できることをひとつずつ増やしていく。
三都杯で見つけた新しい楽しさは、浅香さんがこれから描いていく美容師としての未来へ、確かにつながり始めている。
